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                    さて、今回もデジタルカメラには今やなくてはならない記憶媒体、メモリカードについて研究してみましょう。まずは前回に引き続き、コンパクトフラッシュから。 
                  ■コンパクトフラッシュのおさらい 
                     
                     コンパクトフラッシュ(CF)は米国SanDisk社が開発した小型メモリーカードの規格です。サイズによってタイプI(Type 
                    I)とタイプII(TypeII)があります。タイプIは縦36.4×横42.8×厚さ3.3mmで、タイプIIは厚さが5.5mmと少し厚くなっています。元々規格化された3.3mm厚のフラッシュメモリの小型カード用の規格に、5.5mm厚で、モデム、無線LAN、マイクロドライブ(詳細は次項参照)などの対応製品が発売されている拡張規格である「タイプII」が追加されました。それに伴って、従来の3.3mm厚の規格はタイプIと呼ばれるようになりました。 
                     タイプII(5.5mm厚)のCFカードスロットにはタイプIの製品(3.3mm厚)を装着して使用できますが、その逆はカードの挿入ができません。多くのCFカードはタイプIですが、1GBを超える大容量CFカードやマイクロドライブを使用したい場合は、タイプIIのスロットを持つデジタルカメラを購入する必要があります。 
                     デジタルカメラのメモリとして普及しているほかに、PDAやパソコンに装備されているCFカードスロットは通信機器などにも利用されています。 
                   技術的に大きな特長は、カード本体にコントローラチップを内蔵して、メモリへの読み書きををそのチップが制御している点です。このコントローラチップによって、パソコンなどの機器側からはコンパクトフラッシュが、内蔵型ハードディスクやMOなどのリムーバブルドライブと同様、ATA準拠のストレージとして認識されます。ATAとは「AT 
                    Attachment」の略で、規格の統一と標準化を行なう米国規格協会(American National Standards 
                    Institute)がIDE(内蔵ハードディスクなどで使われているインタフェース規格)を正式に規格化したものです。このことによって、WindowsやPDA(携帯端末)からは標準のデバイス管理の延長として開発ができるというメリットがあります。 
                   小型のメモリカード記憶媒体としては比較的大きいサイズですが、容量も大きいものがラインアップされ、将来的なロードマップもしっかりしているため、高画素タイプや一眼レフタイプのデジタルカメラに採用されています。 
                  
                  ■マイクロドライブに注目だ 
                     
                   
                  
                     
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                          CFカード タイプIIのサイズながら、最大4GBの大容量を実現している1インチハードディスクのマイクロドライブです。元はIBMが開発/生産していましたが、現在は事業部門を日立が買収し、開発と生産を行っています。(写真はアイ・オー・データ機器製:日立製作所製(Hitachi 
                          Global Storage Technologies)) 
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                   デジタルカメラユーザーにとって、コンパクトフラッシュ タイプIIの製品で一番覚えておきたいのはマイクロドライブです。 
                     マイクロドライブはIBMが開発した1インチ(2.54cm)の超小型ハードディスクです。(一般にデスクトップで使用されているハードディスクが3.5インチ、ノートパソコン用が2.5インチです)。更にiPODなどは1.8インチで、それより小さい、500円玉くらいのディスクが1インチです。コンパクトフラッシュ 
                    タイプIIに準拠しているため、タイプII対応のカードスロットに装着して大容量メディアとして利用できます。最大の特長は、大容量であること、ハードディスクは磁気ディスクのためフラッシュメモリと比較して容量単価が安いことです。CFカード製品とマイクロドライブ製品の価格を比較すると、同等の価格で2〜3倍の容量タイプのマイクロドライブが購入できます。 
                     注意点としては、CFカードスロットのタイプIには装着できないことと、タイプIIであっても一部の機器で動作しない場合があることです(互換性)。メーカーのWEBサイトやカタログなどで動作確認機種の情報が公開されていますので、確認してから購入すると良いでしょう。 
                    また、消費電力が大きいことも念頭に入れて使用したいところです。ハードディスクは磁気ディスクを回転させてデータを読み書きするため、機械駆動のないCFカードと比較してより大きな電力が必要となります。そのため、デジタルカメラやノートパソコン、ポータブルストレージなど、限られたバッテリーを使うモバイル環境で使用する際にはCFカードより使用可能時間が短くなります。更に衝撃や振動などにも注意が必要です。大容量のデータを扱える機器だけに故障やデータの破損は大きな損失になります。 
                  
                  
  
                  ■大容量メモリ時代 2GBが抱える壁(FAT16とFAT32)  
                   
                  
                     
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                          FAT32でフォーマットされたCFカードにも対応した飛鳥の『Tripper 
                          Next』。2GB超のCFカードでも容量をフル活用できる。 
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                   CFメモリカードやそれに企画上準拠しているマイクロドライブは、ハードディスクと同様にATA規格に準拠していることは前述しました。その関係から、通常はファイルシステムにハードディスクと同じ「FAT」が使用されています。FATは、File 
                    Allocation Tablesの略で、Windowsでも利用されています。現在、FATにはFAT16とFAT32があり、単にFATと呼称する場合はFAT16をさします。デジタルカメラを扱う上で知っておきたいことは、2GBを超えるCFカードやマイクロドライブのすべての容量をデジタルカメラで使いたい場合は、デジタルカメラがFAT32に対応している必要がある、ということです。 
                     これはFAT16が最大で2GBまでの容量しか扱うことができないからです。そのため2GBを超える大容量ハードディスクやメモリーをFAT16で使用した場合は、最大2GBまでの容量に領域を分割して使用することになります。デジタルカメラには通常、そのように装着したCFカードを領域分割して使用する機能はありませんので、FAT16しか対応していないデジタルカメラでは、例え4GBのCFカードを装着しても、最大2GBまでしか利用できないことになります。 
                     FAT32に対応しているデジタルカメラは、キヤノン Powershot G3/G5/S45/S50、EOS 10D/1Ds/KISS 
                    Digital、コダックのDSC Pro バック/14n、ペンタックスの*ist D、オリンパスのE-1などがありますが、詳細はデジタルカメラやメモリー・メーカーのWEBページで確認しましょう。 
                     ここで注意点があります。飛鳥のポータブルストレージ『Tripper』と『Tripper Plus』はFAT16のみ対応なので、FAT32でフォーマットしたCFやマイクロドライブを読み込むことができません。例えば、EOS 
                    Kiss Digitalに4GBのマイクロドライブを入れて撮影した場合、そのCFカードが読み取りできないのです。新製品の『Tripper 
                    Next』(7月14日発売予定)では、その点を進化させ、FAT32でフォーマットしたCFカードにも対応となりました。 
                  【FAT16とFAT32】 
                    ・FAT(FAT16)は約2GBまでしか認識できない。 
                    ・FAT32はすべての容量をきちんと使用できる。 
                     (FAT32は理論上最大2TBまでの領域を管理できる) 
                  ■フラッシュメモリーの寿命を延ばす「GB 
                    Driver」  
                      前回は、コンパクトフラッシュの高速化製品の話題に触れましたが、製品によっては寿命を延ばすための特殊技術を導入しているものもあります。 
                    フラッシュメモリーには耐久寿命があって、メモリー内の同じブロック部分ばかりに書き込みを行っているとそのブロックが消耗し、他のブロックは十分に使える状態であったとしてもカードの寿命がやってくることになります(カード内のどのブロックを使用して書き込みを行うかはユーザは選択できません)。 
                     TDKは、コンパクトフラッシュやスマートメディアなどのNAND型フラッシュメモリを制御するコントローラIC「GB 
                    Driver」を開発し、CFカード製品に搭載しています。GBDriverは、データ書き込みを特定のメモリブロックのみに集中させず、分散させる機能を持っています。これによって、ブロックの疲労を均一化し、メモリを長寿命化できるとしています。また、経年劣化などで不安定になったブロックを検出・診断する「メモリブロック診断機能」を持ち、検出した場合、書き込みエラーのリスクがあるブロックへの書き込みを回避します。 
                     また、デジタルカメラ・ユーザーにとって、あっては困るトラブルのひとつが、「撮影した画像の読み出し時に画像が現れず、初めてブロックのエラーに気づく」という障害です。GB 
                    Driverはこれを予防する電源の急な遮断や後天的に発生した不良セルを書き込み前に検出する機能も持っていると言われています。GB 
                    Driver搭載のCFカード製品は、TDKやアイオーデータ機器から発売されています。 
                   このように見ていくと、コンパクトフラッシュひとつをとっても、規格の違いやフォーマットによる制限事項があり、いろいろな先進技術や工夫が取り巻いていることが解りますね。ほかにもメモリースティックやSDカード、xDピクチャカードなど、メモリーメディアはいろいろありますから、ぜひそれらの特長も知っておきたいところですね。 
                  ■ご挨拶 
                     さて、スタジオグラフィックス1周年記念リニューアルに伴い、このコーナー「デジカメPopEye」も、しばらくお休みです。オジサンが小市民なりに書いたこのコーナー、如何でしたでしょうか。私はとても楽しく書けて、皆さんと一緒に過ごせた時間が幸せでした。また、お会いする時があればどうぞよろしくお願いします。 
                    では、またいつか、きっと。 
                  <<お知らせ>> 
                    私の著書『体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ(第2版)』(日経BPソフトプレス刊 
                    神崎洋治、西井美鷹著)が発売になりました。今回のコンパクトフラッシュのうんちくのように、知っているようで解っていないデジタルカメラのしくみを学び直す、待望のしくみ解説書の最新版です。コンパクトフラッシュ以外のメモリーカードのことも載っています。ぜひ読んで下さいね。(2009年2月加筆)                   
  
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